「月光の湖畔」 月光を浴びて銀色に光る湖の畔でお前が舞い踊る 俺は切り株に座りギターを奏でる。 それに併せてお前は歌を歌う、 月夜を讃える歌を… その甲高い歌声はひんやりした湖の空気を張り詰めるようだ。 その紅い唇から発せられる歌声は 白い吐息と伴って夜空に向かって突き刺すように打ち上げられる。 お前の歌声は月に届いているのでは無いかと錯覚する。 湖にたたずむ幽かな霧 お前が回ると周りの霧が渦になって回る まるで星雲のように… お前が大きく手を振ると霧は尾を引いて流れる。 まるで彗星のように… お前が手を叩くと霧は光りながら四散する まるで昴のように… お前が歌い終わると、 張り詰めていた湖の空気は解き放たれる。 弓から放たれた矢のように 波がお前の足を洗う 風がお前にまとわりついた霧を払う まるでヴェールを纏った貴婦人が使用人にその衣を解かれ禊ぎをするように… 藤次郎正秀